【米屋の視点で考える】備蓄米 放出の実際の影響と市場の見通し 2025年版 - 尾形米穀店 |komeiro store

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【米屋の視点で考える】備蓄米 放出の実際の影響と市場の見通し 2025年版

2025年3月4日

こんにちは。山形のお米専門店「尾形米穀店」の尾形 厚志です。

最近、ニュースや新聞で「政府備蓄米の放出」という言葉をよく目にするかと思います。

お米の価格が上昇している現在、「これによって価格が下がるのでは」と期待されている方も多いことでしょう。

しかし、個人的な見通しをお伝えすると、「政府より備蓄米が放出されても、お米の価格は大きく変わらず、米不足も根本的には解消しない」と考えています。

本日は、山形米の専門店ならではの視点から、以下のポイントについて掘り下げてみたいと思います。

・備蓄米放出後の実際の市場見通し

・現在の米不足の根本的な原因

・話題となった「消えた21万トン」の実態

・個人間取引やフリマサイトでのお米購入リスク

・専門店で購入することの安心感と品質保証

これらについて、実際に生産者や集荷業者の方々から聞いた話も踏まえながら、まとめていきます。

政府 備蓄米放出後の価格見通し – 大幅な値下がりは期待しにくい状況

今回の備蓄米放出は、市場へのお米の供給量を増やすという点では一定の意義がありますが、

「これによってお米が大幅に安くなる」という期待に応えるのは難しいだろうというのが現状です。

その主な理由として、実際のお米の売買では、農林水産省のお米マンスリーレポートで公表されている相対取引価格よりも遥かに高い金額で取引されています。

先月(25年1月)に、当店で親しくしている集荷業者の方に問合せた所、山形県産の慣行栽培はえぬきの価格は45,000円/1俵(税別)にまで高騰していました。

昨年の1月には13,000円〜14,000円/1俵(税別)で購入できたので、前年比で約3.5倍(!)の仕入れ価格です。

また、他の業者からも「つや姫を42,000円/1俵(税別)で指値注文しているけど、この価格でも注文が成立しない」という声も聞いています。

つまり、高値を提示しても十分な量のお米を供給できないほど、市場に出回っているお米が少ないのです。

このように、スーパーマーケットなどに卸している集荷業者も、非常に高値でお米を仕入れている状況にあります。

備蓄米放出で米不足が緩和される?

このような状況下で備蓄米が放出されても、流通業者や小売店が既存在庫の評価損を避けるため、急激な価格引き下げには慎重にならざるを得ません。

単純に「備蓄米放出で少し安く仕入れられたから値下げ」という商業的判断は、経営的に成立しにくいのです。

一時的に一部銘柄で若干の価格調整が行われる可能性はありますが、「備蓄米放出による大幅値下げ」というシナリオは、現実的な市場構造から見て可能性が低いと考えています。

さらに、備蓄米は入札方式で集荷業者に放出されることになっています。

入札方式では市場原理が働くため、現在の需給状況を考えれば最初から高値で落札される可能性が高く、そうなると小売価格への価格抑制効果はさらに限定的になると考えられます。

農林水産省 米の在庫に関するマンスリーレポートより(2025年2月最新)

備蓄米放出と市場供給の見通し — 現状と今後の分析

「価格は下がらないかもしれないけど、備蓄米が放出されれば、少なくとも去年のような米不足にはならないよね?」という声も耳にします。

この点については、一定の安心材料があると言えます。

現在はまだ流通在庫が一定量確保されており、スーパー等のお米売り場での品薄感は昨夏ほど顕著ではありません。

備蓄米の放出によって、短期的には極端な品薄状態に陥る可能性は低いと考えられます。

農林水産省 米の在庫に関するマンスリーレポートより(2025年2月最新)

ただし、農林水産省の「米に関するマンスリーレポート」によれば、2023年11月と2024年11月の在庫量を比較すると、前年比で約44万トン少ない状況です。

今回放出される備蓄米は約21万トンと言われていますので、単純計算でも前年比の在庫減少分を補うには不十分な量だということがわかります。

過去の民間在庫量の推移を見ると、毎年3月以降は毎月30万トンほど消費している傾向が見られるので、備蓄米放出の21万トンという量は、日本国民のお米消費の3週間〜4週間分でしかないのです。

つまり、備蓄米放出後も全体としての在庫水準は昨年より低い状態が続く見込みであり、

現在の米流通の構造的な課題は依然として解決されていないため、市場の安定的な供給体制が十分に回復したとは言い難い状況です。

皇室献上農家のつや姫|山形県小国町 石垣恵子産(農薬6割減・化学肥料5割減)令和元年産 - 山形米の専門店 尾形米穀店
JAのお米の集荷量の低下という問題

米不足の構造的要因 — 流通経路の変化

「集荷業者による買い占めや囲い込みが米不足や価格高騰の原因ではないか」というご質問をいただくことがありますが、実際はより構造的な変化が背景にあります。

現在の米不足の主要因は、「JAのお米の集荷量の低下」という問題です。

従来、JAは米の流通における中核的役割を担ってきましたが、近年は生産者の直販やネット販売も容易になり、出荷先も多様化したことで、以前ほどJAにお米が集まらなくなっています。

お米の集荷量低下により、大手食品メーカーや外食チェーン等の大企業がJAに発注する際、「年間10,000俵の注文に対して7,000俵まで」といった内容の数量制限が設けられたという話も産地から聞こえてくるようになりました。

その結果、企業は生産者への直接の問合せや、集荷業者やブローカーと呼ばれる卸業者を通じた高値での買付けを強めています。

特に昨年の米不足を目の当たりにした各企業の積極的な在庫確保行動が、さらなる買付競争と価格高騰を招いているのです。

生産者の経営判断として高値の販路を選択するのは合理的な選択ですし、企業が取引先やお客様への安定供給を確保するために必要な在庫を確保するのも当然の企業努力と言えるでしょう。

当店でも、お客様に年間を通して美味しいお米をお届けできるように、例年より前倒しで仕入れ計画を立て、高品質米の確保に努めています。

このように、それぞれが合理的に行動した結果として現在の状況が生じているという点で、特定の誰かを責めるべき問題ではないのですが、

市場全体の需給バランスが崩れ、一時的な備蓄米放出だけでは解決困難な構造的問題となっていることも事実です。

生産地・仕入先・等級・検査の有無など安心できるお米を

非正規流通経路でのお米購入に関する留意点

昨今、インターネットオークションやフリーマーケットアプリなどで「農家直送」「新米特売」といった表示でお米が販売されているケースが増えています。

一見すると価格面で魅力的に映るかもしれませんが、食の安全と品質の観点からいくつかの留意点があります。

まず、品質管理の課題は無視できません。お米は栽培方法だけでなく、収穫後の保管状態によって品質が大きく左右される生鮮品です。

適切な温度・湿度管理が行われていない場合、品質劣化のリスクが生じます。最悪の場合、カビや虫害の発生といった食の安全に関わる問題が起こる可能性もあります。

また、精米技術も品質を左右する重要な要素です。適切な精米機の性能と調整、そして精米の鮮度管理などは専門的な知識と設備が必要となります。

これらの条件が満たされない場合、風味や食感の低下を招きかねません。

創業140年 尾形米穀店は山形市宮町にございます

米屋が提供する価値

私たちは、産地から食卓までの一貫した品質管理と安全性の確保に努めています。当店が提供する価値は以下の点にあります。

・生産者の特定と生産履歴の透明性

・栽培方法の確認と品種特性の把握

・適切な環境下での保管管理

・注文に応じた最適なタイミングでの精米

これらの各工程において、生産者さんとの関係性や長年の経験、お米の専門知識に基づいた管理を行っているため、安心してお召し上がりいただける品質を保証できるのです。

山形を代表するつや姫はもちろん、希少品種を取り扱っています

尾形米穀店セレクション — 安心と品質の5つの約束

尾形米穀店セレクションとは、当店が厳格な品質基準を満たし、自信を持ってお客様に推奨できるお米のことです。

この厳選されたお米は以下の5つの条件を必ず満たしています。

1. お米マイスターによる産地訪問と生産者の確認

当店のお米マイスターが生産者を直接訪問し、田んぼを実際に見て、栽培方法を確認します。

この直接的な関係構築により、インターネット上の匿名販売では得られない「顔の見える関係」を大切にしています。フリマサイトでは「誰が作ったのか」が不明確なケースが多い中、当店では産地と生産者の確かな情報をお客様にお伝えできます。

2.生産者の米作りへのこだわりと土地環境の理解

生産者から直接、水の質や土壌の特性、栽培へのこだわりをお聞きします。

その地域の文化や歴史も含めた背景知識を持つことで、お米の特性をより深く理解し、お客様への適切な提案が可能になります。

個人間取引では得られない専門的な知見に基づいた品質評価を行っています。

3.特別栽培米の厳選

農薬や化学肥料の使用を通常栽培の50%以下に抑えた特別栽培米を中心に選定しています。

安全性への配慮は、専門店として最も重視する点の一つです。

フリマサイトでは栽培方法の詳細や農薬使用状況が不明確なことが多く、安全性の確認が困難です。

4.低温倉庫での適切な保管

収穫されたお米は玄米の状態で15°C以下の低温倉庫で保管します。

温度と湿度を厳密に管理することで、虫害やカビの発生を防ぎ、年間を通して高い品質を維持します。

個人間取引では一般的な家庭での保管が多く、温湿度管理が不十分な場合、品質劣化のリスクが高まります。

5.注文後の精米による鮮度維持

お米は精米した瞬間から酸化が始まり、風味が失われていきます。

当店ではお客様からのご注文をいただいてから精米を行い、精米したての風味と香りを最大限に保った状態でお届けします。

フリマサイトで販売されるお米は精米後の期間が不明確なことが多く、風味の低下が懸念されます。

契約農家さんから直接仕入れたお米のみ販売

お客様へのお約束  当店では備蓄米は販売しません

お米は毎日の食卓に欠かせない大切な食品です。これら5つの厳格な基準により、お米の「安全性」「品質」「鮮度」を確保するようにしています。

価格だけでなく、その安全性と品質にこだわることは、ご家族の健康と満足のために重要なことと考えています。

この度、政府から放出される備蓄米については、玄米専用の低温倉庫でしっかりと保管されているため、安全性や品質については何も心配はいらないはずです。

ただ、生産者の人柄やこだわり・産地の特徴が見えないこと、そして、備蓄米の落札者は原則として精米済みの白米で流通させることが義務付けられており、

ご注文を受けてからの精米ができず、鮮度の良いお米をお届けできないことから、「尾形米穀店セレクション」の基準を満たすことができません。

当店のような小規模小売店には備蓄米自体がほとんど回ってこないと考えられますが、仮に入手する機会があったとしても、当店では備蓄米の販売は行わない方針です。

今後も変わらず「尾形米穀店セレクション」の高品質なお米と、この基準に準ずる厳選した特別栽培米のみ(一部慣行栽培)をお届けし、食卓に笑顔をお届けし続けることをお約束します。

備蓄米放出やお米の価格高騰に関するよくあるご質問

この度の備蓄米の放出に関して、お客様からよくいただくご質問について、専門店の立場からお答えします。

Q1. 備蓄米放出によって、お米の価格は下がりますか?

A1. 備蓄米放出により一時的に市場供給量は増えますが、価格が大幅に下がる可能性は低いと考えています。

流通業者の仕入れ価格がすでに高値で形成されていますし、備蓄米は入札方式で行われるとの報道もありました。

備蓄米自体が高値で落札される可能性もあり、お米の価格を下げる効果は限定的でしょう。

Q2. 備蓄米放出で米不足は解消されますか?

A2. 短期的には供給量増加の効果はありますが、根本的な解決には至らないと見ています。

農林水産省で毎月公開しているお米のマンスリーレポートによると、24年12月時点の在庫が、前年同期比で約44万トン少ないのに対し、

この度の備蓄米の放出量は約21万トンであり、放出しても昨年の同時期の在庫よりも少ない計算になり、不足気味の傾向が続くのではないかと見ています。

Q3. インターネットやフリマサイトでのお米購入は安全ですか?

A3. 個人間取引では品質管理面でのリスクがあります。

温度・湿度管理の不備による品質劣化や、適切な精米技術がない場合の食味低下など、安全性と品質の両面で懸念があるため、慎重な判断が必要です。

Q4. 専門店でお米を購入するメリットは何ですか?

A4. 米穀専門店では、①産地・生産者の情報透明性、②適切な保管環境の維持、③注文に応じた精米による鮮度確保、

といった点で価値を提供しています。また、お客様のニーズに合わせた最適な品種提案も可能です。

Q5. 「尾形米穀店セレクション」の特徴を教えてください

A5. 当店独自の基準で厳選したお米です。

店主自らが産地訪問して確認した生産者のお米、特別栽培米を中心とした安全性の高い品種、低温倉庫での適切な保管と注文後の精米による鮮度維持にこだわっています。

Q6. 用途に合わせたおすすめ品種はありますか?

A6. 日常のごはん、お弁当、炊き込みご飯など、用途によって最適な品種は異なります。

お客様の好みや使用目的をお聞かせいただければ、最適なお米をご提案いたします。

おわりに

昨年から続いているお米の価格高騰や供給状況に関する不安も多々あるかと思いますが、

尾形米穀店では今後も品質と安全性を第一に、安心でおいしい山形のお米を通じて、お客様の食卓に笑顔と会話をお届けしてまいります。

お米選びでお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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